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てのひらの劇場
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手のひらのなかで繰り広げられる人間模様

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かもめの領分(1)
かもめの領分(1)  昔々、小さな島がありました。それは周囲を海に隔てられた孤島でした。数羽のかもめが時々やってきては、羽を休め、周囲の岩礁に集まる小魚をとって行きました。それ以外はなにもない静かな毎日が続きました。 ...続きを見る

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2013/02/10 23:55
川の向こう
「絶対に内緒だぞ」  定雄は真剣な表情で訴えた。それはどこか脅迫めいた怖さを伴っていたが、その童顔が威圧感を低減していた。 「いいか。これは俺とお前だけの秘密なんだ。絶対に、絶対にこれだけは守ってくれ」  念には念を押すという言葉を、琢磨はこのあと何度も聞くことになる。二人の秘密は町の境を流れる小さな川の向こうにある小さな小屋にあった。かつてはバスの待合所として使われていた小屋だが、いまは配線になって使われないまま放置されている。3畳ほどの小屋の中には腰掛ける場所があり、小窓のガラスにはく... ...続きを見る

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2012/09/23 13:50
予定外の予定(6)
 英美は潤んだ瞳で、頬を赤らめ、はにかみとも恥じらいともつかぬ純粋な表情を瞬時見せたあと、それをとりつくろうような饒舌で空白を埋め尽くそうとした。 「私はこれまでいろいろなことにチャレンジしてきたんですが、どうも、その、うまくいきませんでした。なんていうのか、自分の身の丈に合っていないことを無理にやろうとしていたみたいなんです。そんな時に、島村さんからメールをいただいて私、考え直したんです。」  島村はさらに身に覚えのないことをいわれて戸惑った。もしこれが本当に自分がしたことであれば、一人の... ...続きを見る

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2012/08/13 18:41
予定外の予定(5)
「すみません。間違えました」 と一言かけて島村はこの事態を回避しようとした。いきなり知らない女性と同席などできるはずがない。これは何かの間違いだ。そもそもここを予約した覚えもない。仕事帰りにステキな女性と食事なんてとても理想的な展開ではあるが自分には無縁なことだ。大学で自分の不器用さに愛想をつかされて以来、島村には仕事以外で付き合いのある女性などいなかったのだから。 「あのー。島村さん・・・ですよね」 その女性は振り返ってそういった。どこかであったような気がする女性だった。島村は記憶の糸を... ...続きを見る

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2012/08/13 18:36
未来へのラブレター(20)
未来へのラブレター(20)  クリスマスコンサートの日は朝からとても冷え込んでいた。天気予報では夕方から雪が降るかもしれないとのことだった。コンサートを開く会場は駅からしばらく歩いた住宅地の中にあって、午後3時に楽屋入りしたときにはまだ誰もいなかった。もしかしたら、観客は誰も来ないんじゃないか。おそらく部員の何人かはそう思っていたに違いない。空はどんどん曇ってくるし、風も強くなってきている。  下級生である私たちの役目は出演者であるまえにスタッフだ。看板を立てたり、ポスターを貼ったり、プログラムを配布する準備をしたり、そ... ...続きを見る

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2012/03/05 23:42
予定外の予定(4)
 時間は八時を少し過ぎていた。島村はオフィスを出て守衛室に一礼すると、スマートフォンの画面をフリックしてみた。スケジュールソフトをタップする一連の動作はもはや習慣となっていたのである。ソフト上に今日の予定が時系列順に並ぶ。島村はものごとを忘れやすいことを自覚していた。だから、自分のやるべきことを逐一、スケジュールソフトに入力していた。これで約束を忘れることはまずなくなった。それ以前によくやったダブルブッキングや、手順の悪さによる余計な時間の節約もこれでかなりできるようになった。しかし、効率は良く... ...続きを見る

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2012/02/20 18:15
未来へのラブレター(19)
 クリスマスコンサートの準備は着々と進んでいた。度胸試しの路上コンサートも回を重ねるたびに足を止める人が増えた。中にはいつも熱心に聞いてくれる女子高生までいた。中山に言わせると、彼のファンだという。しかし、誰も信じなかった。  常連になったのは彼女だけではない。ほかにも以前見たことがある顔が集まるようになってきた。乳母車のようなシルバーカーにすがりながら、足を止めてくれるお年よりもいる。私たちは分かっていた。コーラスは5人そろって初めて様になるのだ。誰か一人では非力だが、5人が心を合わせた時に... ...続きを見る

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2012/02/17 17:35
予定外の予定(3)
 画面を見る目を疑って、目をこすり、目を閉じ、また大きく開いてみた。いままで作業していたデータがまるきり変わってしまっている。すでに数時間を費やして続けていたことが瞬時に変わってしまっていたのだ。大変な衝撃だった。しかし、その衝撃の方向は通常とは異なるものだった。  すべてのデータが理想的なものになっている。見やすくするためのさまざまな工夫までなされ、配色も申し分ない。かわいらしいカットまで入っている。しかもアニメーションだ。係長好みの「萌え」キャラだ。 「なんてこった。こりゃ完璧じゃないか... ...続きを見る

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2012/02/17 17:33
予定外の予定(2)
 会社から一人二人と帰宅していく中で、島村に残された仕事はとても数時間で終りそうもなかった。島村は自分の能率の悪さを自覚してスケジュール管理用のソフトをコンピュータやスマートフォンなどに入れていた。どれかに入力するとすべてが同期されていくのでとても便利なものだった。ただ、どんなに便利なソフトを使ったとしても、自分の仕事の内容までは変えることはできない。ひたすら自分の前に山積する書類を片付けていくしかなかったのである。  今日の仕事はまた一段と厄介だった。上司に駄目出しされた企画書を手直しするの... ...続きを見る

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2012/02/10 18:22
未来へのラブレター(18)
 私は元実の家を訪ねたことを正直に話した。そして、郵便受けのタカオについても話したのである。恵美さんはさすがにタカオの件については面食らっていた。しかし、思い当たることをあれこれとはなした上で次の結論を得た様だった。 「あのね元ちゃんは確かに今つらい思いをしているけれど、けっして、道を踏み外すコじゃないと思うわ。きっとこにれは何かあるのよ」  恵美さんは僕の目を見つめて言った。 「いとこの私からもお願いするわ。元ちゃんを信じてあげて。私からも連絡してみるから」  私はあわてて首を振った。... ...続きを見る

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2012/02/09 11:44
予定外の予定(1)
「じゃあ、お願いするよ。頼むからな」  岡村係長の言葉はその内容とは裏腹に威圧的な調子に満ちていた。  島村夏生はこの上司の元でもう三年も働いているが、係長を尊敬しようとする気持ちは全く起こらない。何しろ肝心なときには逃げ出して仕事を部下に押し付ける。「岡村の無茶振り」はおそらく本人にも聞えている陰口だ。にもかかわらず、全く改めることをしない。  今日も残業を言い渡されたのは退勤時間のわずか30分前、しかも自分は「家庭の事情」で帰るのだという。 「悪いな島村ちゃん。家庭を持つといろいろ大... ...続きを見る

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2012/02/04 18:54
ひらがなの記憶
ひらがなの記憶  大和は待ち続けていた。もうかれこれ30分は経っただろうか。まるで時間が止まってしまったかのように事態は何も進まなかった。 「焦らなくてもいいんだよ。きっとできるはずだから」  大和の母の結希が脳梗塞を患ってから、実家を訪れる機会が増えた。結希は記憶と言語を司る脳の機能に障害を起こしており、まるで認知症のように振る舞っていた。しかも、それは恒常的なものではなく、見た目には全く健常者と変わらない。突然、発症しては不可思議な行動に走ってしまうのである。  ただし、結希が完全に失ったこと... ...続きを見る

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2012/01/10 19:10
未来へのラブレター(17)
 クリスマスコンサートに選抜出演することになったことは、沈んでいた気持ちを忘れるのにはちょうどよかった。人はいつも明るい気持ちで過ごし続けるのが難しいように、いつまでも落ち込んではいられない。よくも悪しくも忘却の波がやってきて、過去の思い出をかなたに流し去ってしまう。その波の到来を早くするのは何かほかの事に熱中することなのだ。  私たち5人バンドは選抜チームとしてはもっとも若いメンバーだった。先輩には負けたくないという気概が、練習を一層濃いものにした。通常の練習と路上での度胸試しの演奏を重ねて... ...続きを見る

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2011/11/16 13:52
未来へのラブレター(16)
 しばらくは何も手につかなかった。大学の講義にはだいたい出席したものの、あまり耳に入らなかった。大きな目標が失われた気がしてならなかった。サークル活動も休みがちだった。あたりまえの様に輝いていた毎日がなんだか色あせたものになってしまっていたのである。  その頃サークルでは、年末に行われるクリスマスコンサートに向けて、オーディションが始まっていた。全員でのコーラス以外に4、5人などの編成でアカペラの歌を披露するコーナーがある。一人一人の歌唱力が試されるのではあるが、確実に自分をアピールできるチャ... ...続きを見る

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2011/11/03 08:46
未来へのラブレター(15)
 その住所の示す建物は3階建てのアパートだった。築年数がかなり経っているように見えたが、それでもこの周りの建物が昔から住んでいる人たちの住まいであるのと比べるとそれでも少々こじゃれた感じがした。さすがに元実が選んだ建物だと勝手に思い込んだ。ただ、入り口につけられた「メゾン」の赤いカタカナの文字はいかにも不似合いで、しかも今にも崩れ落ちそうだった。  元実の部屋は番号からして2階のはずだ。少々ためらったが、思い切って進んだ。今は前進しかない。共同玄関に入ると郵便受けが並んでいる。そのほとんどには... ...続きを見る

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2011/10/10 22:59
未来へのラブレター(14)
未来へのラブレター(14)  翌日、講義が終わるとすぐに元実の住所を訪ねるために大学を飛び出した。合唱サークルのある日だったが、その日の私には思いを止める方法がなかったのだ。郊外へ伸びる電車には急行や準急などいくつもの種類があったが、停車駅を確認することもなく発車ベルに促されるまま飛び乗った。幸いそれは目的地に着くための最善の方法だった。  初めて乗る電車は実際の時間以上に長い時間を感じさせるものだ。まして今日はあの元実に会えるかもしれないとなると心の波は激しく打ち寄せ、頑丈な堤防さえも打ち砕きそうだった。大きなため息を... ...続きを見る

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2011/10/07 06:17
未来へのラブレター(13)
未来へのラブレター(13)  私たちはセンターを出た後、駅の近くの喫茶店に入って反省会を開いた。反省会という名前だったが実際は単なる息抜きであり、演奏で盛り上がった気持ちをクールダウンするための時間に過ぎないものだった。そして、多くの場合は2次会があった。これも酒を飲む口実みたいなものだ。  喫茶店で頼むのはメンバーの多くはコーヒーだが、なかにはクリームソーダやパフェを注文するものもいた。男ばかりの団体ではそれでもちょっとした冷やかしの話題になった。デートで覚えた味だろうとか、ストローを二本たてて喜んだりとか、他愛もない... ...続きを見る

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2011/09/24 23:57
未来へのラブレター(12)
 私は気もそぞろに茶菓のもてなしを受けたあと、リーダーの合図に合わせてあいさつをした。皆が出口に向かう中で私は、職員室のなかに消えた大倉という女性職員を探しに戻った。そして、我々に供した湯飲みなどを洗う背中を見つけたのである。 「あのー、大倉さん」  名前を呼ばれて驚いている職員は、作業を中断してこちらに振り返る。 「何か、お忘れ物ですか」 「いえ、そうではなくて」 「どこかで、以前お逢いしましたっけ」 「あの、大倉さんは香澄が丘小学校の卒業生ですか」 「はい、そうです・・・けど」... ...続きを見る

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2011/09/12 12:18
未来へのラブレター(11)
 連絡の手段がないことを悟った私だったが、どこかできっとつながりを見出すことが出来ると信じていた。それは全く根拠のない思いだった。しかし、どうもそれがいつかは叶うのではないかという予兆を些細なことから感じ取ろうとしていた。たとえば、誰かの何年ぶりかの再会というニュースがあれば、自分にもそれが起きるはずだと信じ込んだ。  そのころ、合唱サークルの活動として大学のある市内の福祉施設に行った。いわゆる特別養護老人ホームである。そこにはさまざまな障害を持った高齢者が身を寄せ合って過ごしていた。サークル... ...続きを見る

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2011/09/10 15:47
未来へのラブレター(10)
 2年生になって変わったことといえば、講義の履修に関しての「小技」を覚えたことくらいだ。「楽勝」科目と称される単位認定に甘い講義を中心に履修し、かなりの時間をサボった。しかし、歴史関係の講義だけはすべて出席した。自分のやりたいことにちかいことを研究している助教授の授業は履修していないものまで聴講した。それは周囲の学生にとってみれば不思議なことだったようだ。ほとんどの学生が適当に講義を聴き、講義中も考えているのは午後の過ごし方だった。私の大学のイメージは(あくまで真実を知らぬ外部の人たちにとっては... ...続きを見る

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

2011/08/30 13:30

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